歯科衛生士として働いていると、ごく一部の人だけが耳にする「裏の副業の話」があります。
きっかけは何気ない技工士との会話なのに、気づけば“紹介料”という甘い響きに心が揺れることも・・・
特に人脈の広いベテラン衛生士ほど、このような誘いを受けやすいのが現実です。
患者様の治療費に上乗せされると分かっていても、数%の報酬がまとまれば大きな金額に。
今回は、読者から寄せられた体験談をもとに、歯科衛生士の「グレーなアルバイト」の実態をお話しします。
技工士との人脈で始まる副業
歯科衛生士として経験を積むと、自然と技工士とのつながりも増えていきます。
転職や勤務先の変化が多い職種同士だからこそ、人脈はどんどん広がりやすいのです。
そんな中で交わされる「どこの技工所を使っているの?」という何気ない会話が、副業の入り口になることもあります。
気づけば「先生にうちの技工所を紹介してほしい」と頼まれ、そこから報酬が発生する流れに発展していくケースも少なくありません。
紹介料と患者負担の現実
技工所を紹介することで歯科衛生士に支払われる紹介料は、一見するとおいしい副収入に思えます。
例えば、売上の10%なら、トータル30万円分の依頼で3万円もの報酬が入る計算です。
しかし実際には、その報酬分は技工所の請求に上乗せされ、医院を通して患者様の治療費に組み込まれています。
つまり、最終的に負担しているのは患者様なのです。
先生は紹介料を受け取っているとは知らず、その仕組みに気づかないまま、結果的に負担を背負うのは患者様。
そう考えると、紹介料は単なる副収入ではなく「患者様から預かったお金」だと意識せざるを得ません。
副業としては魅力的に映る一方で、医療者としての責任を考えると心の中で大きな葛藤が生まれる――まさに、この仕組みそのものが矛盾だと言えますよね。
副収入か職業倫理
技工所を紹介して得られる報酬は、確かに歯科衛生士にとって魅力的な副収入です。
金額が積み重なれば生活の支えになることもあるでしょう。
しかし、その裏で負担を強いられるのは患者様です。
先生も報酬の存在を知らないまま請求が進み、気づかないうちに治療費が高くなっている現実があります。
本音を言うと、私自身も知り合いの技工士から「報酬分は請求に上乗せするから大丈夫」と内職を勧められたことがあります。
医院が技工所に依頼するたびに報酬が発生し、永久的に副収入が得られる仕組み――その甘い誘いに心が揺れたのも事実です。
けれど、歯科衛生士として働けるのは患者様が来院してくださるおかげ。
そう考えて最終的に紹介は断りました。
もう5年以上前の話ですが、今でもあのときの「困惑した迷い」をはっきり覚えています。
「目先の副収入を選ぶか」「医療従事者としての誇りを守るか」――この選択は簡単ではありません。
皆さんならどうしますか?
まとめ|副収入と倫理のはざまで
今回の投稿者さんは、年内で医院を辞める決断をしたそうです。
院内では若干の居づらさも感じ、次の職場へ移る選択をしたと綴られていました。
しかし、離職したとしても、その医院から技工所に依頼がある限り「報酬は支払われる」仕組み。
さらに、技工所からは「次の医院でも営業してほしい」と頼まれたそうですが、おそらくその話には乗らないだろう、とも述べています。
技工所の仕事は長時間労働・休みの少なさ・同業者同士の案件争いと厳しい環境。
その中で営業や広告に費用をかけるより、人脈を持つ歯科衛生士に頼るほうが、コストも労力もかけずに仕事を獲得できる・・・そんな背景もあるのだろうと感じました。
歯科衛生士にとっては甘い副収入・・・
ですが結局は、患者様のお金と歯科衛生士の良心に関わる問題なのです。
ところで・・・

なぜ、紹介した医院を辞めても報酬が発生するの?



歯科衛生士にお願いする段階で、
「好条件を出さないと動いてくれない」からです。
たとえ今の医院を辞めても、極端にいえばあなたがアメリカに永住しても、紹介した医院から依頼があったら報酬を払い続ける――そんな約束をすることで協力を得ているのです。



でも、今月は依頼が無かったってウソを付けば技工所は得するよね?



だからこそ、「どれだけ信用できる技工士か」が大前提なの。
もし歯科衛生士が円満退職していれば、将来的にアルバイトで復職する可能性もありますし、同僚と連絡を取っていれば「今もあの技工所に仕事出してるよ」と情報が伝わるかもしれません。
技工所にとっても、不正をして信用を失い、仕事を失うリスクは避けたいから正直に報告すると思いますよ。



じゃあ本当に信用できるの?



完全に信用できるとは言い切れません。
副収入は魅力的ですが、グレーゾーンでの報酬の受け渡しであることに変わりはないのですから。
最後にもう一度、あなたに問います。
目先の副収入を取りますか? それとも、患者様の信頼と歯科衛生士としての誇りを守りますか?
コメント
コメント一覧 (2件)
この記事を拝見して、思わず共感してしまいました。
私も以前、大阪で勤務していた頃に“そういう副業がある”と耳にしたことがあります。
正直、ちょっとしたお小遣い稼ぎになるなんて羨ましいなと思った自分もいました。
でも、この記事を読んで、それが患者様の治療費に上乗せされていると知り、本当に驚きました。
今まで気づかなかった視点で考えるきっかけをいただき、改めて歯科衛生士としての立場を考え直さないといけないと感じました。
私は歯科医師ですが、この記事を読んで思い出したことがあります。
以前、リクルート関係者から『技術はトップクラス』『とにかく腕がいいから一度でいいから試して欲しい』と、しつこく勧誘されたことがありました。
ところが、その人を知る別の人物から『紹介料を上乗せして請求されるから、依頼するなら直接問い合わせたほうが絶対に安いよ』と忠告されたのです。
結局、そうした**どんぶり勘定**をする同業者は信頼できないと判断し、取引は見送りました。
この記事を読みながら、あの時の判断は間違っていなかったと改めて感じました。