先輩、相談があるんですけど
ある日、専門学校時代から親しくしていた私の後輩から突然連絡がありました。
学年が違うとあまり接点も無く、知り合える機会は少ないのですが、彼女とは同じ医院で歯科助手のアルバイトをしていたので仲良くなりました。
後輩は25歳、キャリア4年目を迎える歯科衛生士です。
どうしたの?
実は、今の職場より雇用条件がいい歯科医院に転職したくて。
でも、今の医院は人手不足なので辞め辛くて悩んでるんです。
できれば、年内中には何とか転職したいんですけど・・・
キャリア4年目を迎え、次のステップとして雇用条件の良い別の歯科医院に転職を希望する彼女でした。
しかし、
慢性的な歯科衛生士の人手不足を、経営者だけではなく、歯科衛生士(本人)自らも痛感するとは!
そうなんだ。
それは悩むよね・・・
円満に辞めて、次に進むにはちょっと工夫が必要かも?
専門学校、そして歯科助手アルバイト時代からの信頼関係があるだけに、できるだけ彼女が円満に退職し、次のキャリアへ進めるよう全力でサポートしたいと感じました。
このような状況で、どのように退職を進めていけば良いのか、今回は彼女の事例をもとに、円満退職のポイントを書きたいと思います。
ちなみに、
私と仲の良い歯科医師にも「この相談」を聞いてもらいましたが・・・
「辞めるなら、うちの医院で働かないか聞いてみてよ?」
聞いた私がバカでした( ノД`)シクシク…
辞めたいけれど、今の職場が辞めづらい理由
歯科衛生士として働いていると、より良い条件や新しい環境を求めて転職を考えることがあるでしょう。
しかし、どこの歯科医院も人手不足が深刻な状況にあり、退職の意向を伝えるのが難しいと感じることも少なくありません。
職場の事情を気にして「辞めづらく感じる」心理的な負担は、歯科衛生士に特有の悩みです。
「辞めたい」けれど、
「辞めにくい」後ろめたさ。
円満に退職するために、知っておくべきマナーや心構え、実際に注意すべきポイントを考えてみましょう。
人手不足の影響と歯科衛生士の悩み
現在、多くの歯科医院が人手不足に直面しており、その影響は現場で働く歯科衛生士にも大きく響いています。
特に、患者対応の忙しさが増す中で、スタッフ一人ひとりの負担が重くなり、業務に追われる日々が続いていますよね。
こうした状況の中、転職を考えても「自分が辞めたら、さらに職場に迷惑がかかるのではないか」と感じ、退職の意向を伝えづらくなることがあります。
後任がすぐに見つからないという不安や、職場に迷惑をかけたくないという気持ちが強まり、辞めづらさを感じてしまうのです。
しかし、こうした悩みを抱えたまま働き続けることは、自身のキャリアと生活に悪影響を及ぼす可能性があります。
転職は個人の将来を見据えた選択であり、職場の状況に縛られて、自分の成長機会を逃すことは避けるべきです。
ここで大切なのは、職場と自分の両方にとってベストな解決策を模索することです。
退職までのプランを考え、前向きな退職を目指しましょう。
辞めることへの心理的な負担と葛藤
歯科衛生士として働きながら、転職や退職を考える時、まず直面するのは心理的な負担です。
特に、長い間一緒に働いてきた同僚や上司との関係が深まっていると、辞める決断がより難しく感じられます。
自分だけが去ることで、周囲に迷惑をかけるのではないかという不安が生まれ、葛藤に陥ることが多いのです。
さらに、患者さんとの関係性も辞める際の心理的ハードルとなります。
定期的に訪れる患者さんや、長期にわたる治療をサポートしてきた方々に対して、突然の退職は申し訳ないと感じることが少なくありません。
こうした感情が重なり、退職の意思を伝えるのが遅れたり、決断そのものに迷いが生じることがあります。
葛藤を抱えたままでは、仕事のストレスが増すばかりか、自分自身の成長や幸福感を犠牲にすることもあります。
苦渋の「決断」と考えず、未来への「英断」と思うことが大事です。
「あなたのキャリア」が転換期を迎えたと考えましょう。
明確な転職理由を伝える
「給料が安いから」なんて言えないですか?
でも、あなたの生活水準を維持するために必要なら、正直に伝えるべきだと思います。
大切な事は「言い方」「伝え方」、そして、今の職場と将来の職場との比較です。
向上心やキャリアアップを理由に転職
もし、あなたが今の職場で若手の教育係を任されているのなら、この理由が一番最適だと思います。
「教える立場ではなく、もっと技術のあるベテランが働く職場で腕を磨きたい」
また、審美や矯正、小児歯科など専門に特化している医院で働きたいなどを理由にすると、引き留める理由が無いのでスムーズに退職できるかもしれないです。
ですが、今現在も指導されている立場の比較的キャリアの浅い歯科衛生士が、キャリアアップを理由に退職したいと言っても、退職意思は伝わらないと思います。
本当にキャリアアップを目指しているなら、スキルや経験が十分に積み重なった段階で退職するのが賢明です。
職場環境の変化
今の職場では実現不可能な事を理由にする。
例えば?
「土・日が定休日の医院で働きたい」「通勤時間の短い場所で働きたい」「研修制度が設けられている医院で働きたい」など、今の医院では叶えられない理由を正直に伝えると、引き留められることは少ないと思います。
金銭的な事が理由の場合は
正直に言うべきだと思います。
給料の高い医院に転職できたとしても、新たな人間関係を築く事は非常に気を使うことです。
もし、職場に残ることで昇給を約束してもらえるのなら、今の環境を続けることが最良だと思いませんか?
でも、
「給料が安いから転職します」って言うの?
言ったところで、
「あなたは、今の給与形態を確認したうえで、応募してきたのでは?」と逆手に取られてしまいます。
お勧めな伝え方は?
「今、頂いているお給料に感謝しています」「将来を考えた時に」「毎月の積立額を●万円増やしたい」とリアルな金額を伝える事です。
もし、院長がその額を払ってでも残って欲しいと思えば昇給してもらえますし、そこまでは払えないと思われたら退職を受け入れてもらえる思います。
生活環境の変化
結婚や出産、家族の介護などの理由で働き方を変える必要があるときは、無理をせず仕事とプライベートのバランスを考えて退職の決断をすることが大切です。
キャリアアップや金銭的な理由ではなく、実生活や体調に係る退職は急であっても迷う必要はありません。
この理由で退職を伝える時は?
必ず、明確な退職日を記入した退職届も用意しておきましょう。
もし、有給が残ってれば?
「退職日の●●日前から有給を消化させていただきます」と付け加える事も忘れずに!
職場状況を見ながら退職時期を決める
転職マナーの一つに「退職のタイミング」があります。
退職時期を間違えると、職場の経営者や責任者だけでなく同僚とのトラブルが発生したり、関係に支障をきたすこともあります。
職場の状況を考慮して「最適なタイミング」を見つけることが、円満退職への第一歩だと思います。
歯科衛生士が一人減る
ドクターや経営者だけでなく、歯科医院で働くスタッフにとっても死活問題ですよね!
退職を考える際には、自分自身のプランだけでなく、職場の状況も慎重に見極め考えることが大切です。
迷惑にならないタイミングを見極めないと!
繁忙期に退職を申し出ると、同僚や上司に余計な負担をかけるだけでなく、退職手続きや引き継ぎもスムーズに進まないことが考えられます。
特に年末は、どこの医院も忙しいですよね?
昔ながらの風習だと、キャリア3年目の6月に辞める歯科衛生士は多いんですよね!
満額の賞与を手にしてから「退職するパターン」ですね?
こうした時期を避け、比較的落ち着いたタイミングで退職を決めることが理想的だと思います。
しかし、職場の都合ばかりを優先しすぎると、自分自身の理想を先延ばしにするリスクもあります。
職場の状況を見つつも、自分に最適な退職時期を見つけることが必要ですよね!
例えば?
新年度やスタッフ採用時期を見計らい退職することは、負担を最小限にしながら円満退職が可能となります。
「職場の現状」と「自分の都合」をバランスよく考慮し、互いにとって最も良いタイミングを見つけましょう。
丁寧な引き継ぎや、誠実なコミュニケーションこそが、職場との良好な関係を保ちつつ、円満に次のステップへ勧めると思います。
円満退職を実現するための方法
円満に退職することは、次のスタートを切るための重要なポイントです。
特に、長く働いた職場や人手不足の現場では、辞め方によって職場との関係が大きく左右されることもあります。
職場や同僚に感謝の気持ちを持ちながら、「円満退職を実現」する!
そのためには、退職の意思を伝えるタイミングや方法など「退職に対する誠意」を示すことが大切です。
退職の意思を伝えるタイミングと伝え方
忙しい職場や人手不足の状況では、タイミングを誤ると職場に迷惑をかけることになり、退職日までの間にトラブルが生じることもあります。
慎重に考え判断する。
適切に意思を伝えることが、円満退職の第一歩です。
退職を伝えるタイミングとしては、少なくとも2ヶ月前には上司(先輩)に相談するのが一般的です。
繁忙期に入る前や、新たなスタッフが入るタイミングを見計らうことで、負担を減らしながら辞めることができます。
退職の伝え方は?
経営者や院長に時間を空けてもらい、丁寧な言葉で退職の意向を伝えることが基本です。
そして、退職時期を医院側に一任するなら「退職願」を手渡す。
退職時期を明確に伝えたいなら、退職日を記入した「退職届」を手渡しましょう。
注意すべきは、たとえ院長と友好的な関係であっても、決して口頭のみで退職意思を伝えるのは危険です。
あなたの意思を書面にすることで、より強い退職意思を示すことになります。
決断から退職日までの流れ
ところで、後輩の退職は円満に進んでいるの?
かなり遠回りしましたね。
ここからは、後輩が取った対策を基にお話しいたします。
実際に連絡を取り合ったのは、2023年6月末頃からです。
まず、後輩の転職理由は?
昇給と福利厚生の整った医院で働きたいです。
退職希望時期は?
明確な時期は決めていませんが、年内中には転職しておきたいです。
今の職場のスタッフ人数は?
社員DHは私を含めて4人
アルバイトDHは1人
歯科助手は全てパートで3人です。
まずは、今の職場の繁忙期を知りましょう。
先輩スタッフに退職の意思を伝え、スムーズに退職できる時期を聞いておくことも大切です。
今は7月なので、
10月末までには退職したいと思っています。
職場の先輩からは、
新卒の採用人数にも影響するので、
院長には早めに伝えなさいと言われました。
何度も言っていますが、
退職日を決めているのなら、退職日を記入した「退職届」を院長に手渡しましょう。
私は社会人を経験している、退職経験者なので一般的な事を説明しますと?
退職願:期日を決めず、退職する意思があると宣言し退職日は会社に一任
退職届:期日を記入、この日に絶対に辞めると宣言する
退職届は退職する意思が固く、この日で辞めますと伝える書類です。
一方の退職願は、事前に退職することが決まっていたり、直ぐに辞められる状況ではないなど、退職時期を会社に任せる時に用意する書類です。
私の場合は、
「退職日を10月31日をもって」と書けば良いですよね!
職場の先輩には、
「次の職場に行っても頑張りなさい」と言ってもらえたので、
安心して院長先生に伝える事ができます。
その後、
後輩は7月16日の終礼後、退職の意思を伝えて退職届を院長に手渡しました。
退職の理由は、ちゃんと説明できた?
ハイ
対策したお陰でバッチリでしたよ!
後輩は新卒で入社して4年目を迎えましたが、昇給は一度だけでした。
さらに、昨年末からスタッフ全員の賞与が4ヶ月分から3.5ヶ月分に減額されました。
その際、減額の理由として「翌年度から福利厚生の見直しを行うため」と説明されましたが、半年が経過しても具体的な説明はなく、実際のところは「ただ年収が減っただけ」と感じざるを得ない状況でした。
昇給が無ければ、賞与額は毎年同じですからね!
そこで、後輩は・・・
25歳での想定年収と、今年の推定年収には約●●万円の差がありました。
このまま30歳まで働き続けると、約●●万円も差が生じることになります。
生活や将来を考えると、早めに退職の意思をお伝えし、休日を利用して転職活動を始めたいと思います。
院長先生は、
「それは私に責任がありますね」「退職の意思が変われば教えてください」「転職活動で中抜けや早退が必要なら周りのスタッフでサポートするので遠慮せずに伝えてください」とおっしゃっていただきました。
辞めるのが申し訳く思うほど、親切心が溢れる対応をしていただき感謝です。
あなたの勇気ある発言が制度改善のきっかけとなれば、
残るスタッフにとっても良い結果になると思います。
ところで、有給消化と引継ぎの話は?
有給は常に消化していたので「問題なし」です。
引継ぎに関しては、
2人いる後輩DHに、もう少し責任のある仕事を任せて一人前に育てようね!って言われました。
歯科衛生士専門学生の就職活動は、8月末頃から始まるので、7月中に退職意思を伝えるのは案外「良い時期」かも知れないですね!
では、ここからは退職日までの心得を
無事に退職願を受理されたら、まずは通常業務をしっかりと務め、実務的・事務的な引継ぎをしっかりと行いましょう。
後輩のように、退職まで90日以上あると、その間にも有給が発生すると思います。
気兼ねすることなく、必ず休みを取りましょうね!
受け持ち患者さまには?
挨拶やお礼は言った方が良いのかな?
私の意見としては、
先生が「挨拶しておきなさい」と言わない限りは黙っておきます。
医院から預かっている物の返却は?
これは、社会人を経験した私の実例ですが・・・
退職を伝えた翌日以降、会社から借りている備品や書類などは返却する前に、全てリストに書きました。
実は、これって凄く重要なのです!
意地の悪い先輩や上司に、「あれが返却されていない」「これが返ってない」なんて言われることが!!
そんなトラブルを避けるためにも、私は消しゴム1つから社用携帯まで、全てをリストにしました。
返却した備品の内容、日付、担当者名を記入し、廃棄する備品についても確認を取り、全ての返却が確認できたら、1部を自分の保管用にコピーして、原紙を上司に提出しました。
これをする事により、退職日の前後に備品返却でトラブルが生じることを防げます。
また、リスト化することは、業務や引き継ぎがどれだけ進んでいるかを客観的に把握できるので、多くの備品を管理しているのであれば作成を勧めます。
歯科医院では、そこまで徹底する必要はないかもしれませんが、鍵や仮払金などの重要な物を返却する際には、書類を用意するのも一つの方法だと思います。
主に【退職当日】返却する重要な物
・社会保険に加入していれば、健康保険被保険者証(保険証)
・名刺や名札
・鍵、セキュリティ解除キー、入館証など
・定期券類(電車・バス・駐輪券など)
・制服やスクラブなど
主に【退職当日】受け取る重要な物
・離職票
・年金手帳
・雇用保険被保険者証(入社後に渡されているケースもあり)
・源泉徴収票
先生に
「次の就職先が決まったら教えて」と言われたけど・・・
教える義務は無いので、言いたくなければ無視しても大丈夫だよ!
でもね!
退職後の行動について、誓約書に署名を求められることがあります。
誓約書には、主に医院や患者の守秘義務に関する内容だと思いますが・・・
稀に、
「当院から半径●km圏内の歯科医院には、1年間就職してはいけない」みたいな文言を入れている意地悪な医院もあるみたいです。
署名する前に、必ず全ての項目を確認して、分からない箇所は質問しましょう。
もし、近くの歯科医院に就職しようと思っていたら?
医院名は言わずに、
「もしかしたら●km圏内の医院に就職するかも知れませんので、署名は一旦保留させてください」と伝えて誓約書を持ち帰りましょう。
このような時の対処としましては?
署名せずに、誓約書を持ち帰らせてもらいます。
そして、内定している次の職場に相談することが重要です。
基本的には、このような誓約書は雇用されている期間中に守らせる義務であり、辞める人間に対して制限させる義務はありません。
退職後は「職業選択の自由」という基本的な権利があり、この義務を簡単に課すことはできません。
ただし、入社当時に「競業避止特約」または、退職後の再就職先に関する決め事のような書類に署名していたなら、少し面倒になるかも知れません。
歯科業界には無いと思いますが、万一この手の書類に署名してしまっていたら、市役所(役場)の無料法律相談に行き、最善なアドバイスを聞きに行くことをお勧めいたします。
基本的には、退職者が同じ業界で働く自由は尊重されます。
医院が利益を守るために、制限する必要が生じることがあっても、労働者の自由ができるだけ尊重されるように裁判所で判断されることが多いみたいです。
私の場合は、誓約書に「再就職に関しての制約」は書かれていなかったので大丈夫でした。
そして、晴れて退職することができました。
退職するに当たっては、引継ぎや備品整理、返却する事務所類もあれば、市役所やハローワーク、再就職先に提出する書類を受け取る必要があります。
あなただけでなく、医院側にも準備や手続きに時間がかかるため、退職の意思を伝える際には、十分な時間の余裕を持つことが大切です。
事前にしっかりと計画を立てて、スムーズな退職を心がけましょう。
追伸:
私は退職してから約3週間後に、希望に合った歯科医院に再就職することができました。
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